学ボ新聞

運営組織Gakuvoの裏側

現場の声!現地で学生と活動した引率者に直撃インタビュー!

Gakuvoのプログラムにおいて、学生の安全や学びをサポートする存在として必要不可欠な“引率者”。
数年前はいち参加者として、そして今回から引率者として活動に携わってくださったNPO法人グッド職員 青山 聖さんに、お話を伺いました。

NPO法人グッドとは

若者のきっかけづくりを応援する団体。大学生を中心に、高校生から社会人、不登校・ひきこもり経験者など、幅広い世代や経歴を持つ若者を対象に、ボランティア・ワークキャンプ(合宿型ボランティア)を実施。国内外の様々な地域を訪れ、共同生活やホームステイをしながら、その場所が必要としているワークを行っている。新しい仲間や現地の人々との出会いと様々な体験を通じて、若者たちに新しい一歩を踏み出すきっかけをつかんでほしいという思いで、2001年から活動を続けている。また、池袋に程近い事務所にはフリースペースが併設され、若者たちの交流の場にもなっている。

【青山 聖さん】1996年生まれ 愛知県名古屋市出身

学生の頃から海外のワークキャンプや様々なボランティア活動に勤しみ、グッドの学生インターンを経て、昨年、2018年に正式にスタッフとなった。学生時代はGakuvoの学生ボランティア派遣の活動にも数回参加していて、その縁もあり、今回は引率という立場で、岡山で活動した第11陣を率いていただくことになった。

仕事は、生活!?

Gakuvo普段、青山さんは、主にどのようなお仕事を?

青山さん難しいですね…、本当に生活すること自体が仕事なので…。洗濯物を回したりとか?笑

冗談交じりに青山さんは笑ったが、仕事の内容を尋ねて「生活」という答えが返って来たのは予想外だった。営業でも制作でも広報でも経理でもなく「生活」。
実際、訪れた場所は事務所というよりは家だった。生活の場でもあり、学生たちが遊びに来るフリースペースでもあるというその場所は、驚くほどアットホームだった。

堅苦しい言い方をすると、青山さんの仕事は、大学での説明会などの広報活動、企画から引率(参加者の安全管理やサポート)、会計までを行う一連のワークキャンプの業務。そして、遊びにくる学生たちとの交流や共同生活寮の運営と、多岐に渡る。フリースペースや寮での業務を「生活」という言葉で表したところが、グッドという団体が大切にしている部分なのかもしれない。

参加者から引率者へ

GakuvoGakuvoの学生ボランティア派遣の引率をすることになったきっかけや理由があれば教えてください

青山さん直接的には、Gakuvoからグッドに声を掛けて頂いたことがきっかけです。学生時代に参加した2015年9月の常総(茨城)、その後のいわき(福島)の2回の活動では、地域の現状を目の当たりにし、被災された方たちの言葉を耳にして、強く心を動かされました。その頃の想いに突き動かされ、今回、僕にできることがあれば是非、という気持ちで引き受けさせて頂きました。

Gakuvo自分が引率者になった今、当時の引率の方から引き継いでいることってありますか?

青山さんどんなにいい活動をしていても、怪我をしてしまったらどうしようもない。第一に優先するのは安全であるという意識ですかね。

当時の引率者は印象的で、その人の言葉は青山さんの記憶に今でもはっきりと残っている。「地域の人には絶対迷惑をかけない」「ゴミは絶対持ち帰る」「自己完結がボランティア」「次に来る人たちのことを考える」。グッドのワークキャンプでは、参加する若者に重きを置くことが多いが、災害ボランティアのようなケースでは、何よりも被災地の方たちに重きを置いて活動する。それを体現する引率者との出会いから、青山さんは大きく影響を受けたようだ。

被災地・岡山県 倉敷市 真備町を訪れて

Gakuvo現地入りした時の様子はどうだったのでしょうか?

青山さん真備(岡山)の被害状況は、2階まで浸水してしまった様子などをインターネットで見て知っていましたので、これは大変だなと思っていたのですが、到着した時に見えた街並みはかなり普通だったんですよ。一見、ここが本当に被災した地域なのかわからなかったくらいです。
常総(茨城)の時は、川が決壊して、土砂が崩れたり、電信柱が斜めになっていたり、道路がごそっとなくなっていたりしていましたが、今回はそういう状況ではなくて、学生たちもはじめは「ここが被災地なのかな?」という感じでした。
でも、現地の受入担当の方の話を聞き、建物をよく見ると外壁などの色が変わっているんですよね。家屋の2階まで浸水していた跡がついていました。

青山さんが真備町に入った時には、既に水が引いた後だったため、土砂崩れが起こった広島などに比べると、被害状況が見た目ではわかりにくかったそうだ。だが、一度水に浸かってしまうと、家屋の壁の内側はカビの温床になるため、早いうちにカビの発生源を断つ必要があった。
「被害が見えにくい被災地には、支援が届かなくなり、被害が一目でわかる地域に支援が偏るというジレンマがあるんです。」と青山さんは語ってくれた。

Gakuvo現地では、主にどのような活動をしたのでしょうか?

青山さん今回は日帰りのプログラムでした。鳥取に朝5時集合。9時に現地に着いて、10時から作業開始、15時には作業終了という流れで、ボランティアは13名、地域の方が2名というチームでした。2階建ての福祉施設の浸水した箇所、壁や天井の取り壊しがメインの作業になりました。 バールを使って壁を壊していくのですが、学生たちにとっては、扱ったことのない工具での作業だったため、大変気を使いました。

Gakuvoバールで壁を壊すというのは…、普通の学生にはあまり経験のない作業ですよね?

青山さんまず経験がないと思います。

Gakuvo危ないところもあるのでしょうか?

青山さんそうですね、無暗に壁を壊すと周囲が崩れる危険もあり、安全管理には非常に気を使いました。壁を壊す隊、天井をはがす隊、瓦礫を集める隊に分かれ、作業は必ず距離をとって人員を配置するようにしました。また、まだ9月で暑かったため、地域の方が差し入れてくれたアイスコーヒーを配る水分補給隊も構成しました。さらに建物の2階は特に熱がこもっていたため、ファンを導入し、熱中症にならないよう対策をしました。

Gakuvo学生たちの様子はどうでしたか?

青山さん暑い中での作業でしたが、緊張感を持って、しっかり活動してくれました。バールで壁を壊す作業は、並んで行うことができませんし、カビを吸い込まないようにマスクと、安全のためにヘルメットを着用していたため、作業中にメンバー同士が会話をすることは、ほとんどできません。そのような状況でしたが、被災した方たちのためにできる限り作業を進めたい、という想いから、学生たちは黙々と一生懸命作業を続けてくれました。

現場を取り仕切る一方で、青山さんは現地の方々の声に積極的に耳を傾けるよう心掛けていた。「真備町は水害が起こるような地域ではなく、まさかの出来事だった」と現地の方は口を揃えていたという。水の引いた今では被害の状況は見えづらくなっているが、災害当日は「屋根の上で呆然と水の流れを見ていた」、「自分の車が泥に沈んでいくのを眺めていた」という声や「災害保険に入っていたかどうかで、災害後の大変さ(家屋などの損壊判定によっては補助金だけではどうにもならない場合も多い)がかなり異なる」という声もあった。今、住人の方たちが一番つらいのは、「自分の家を自分で壊すこと」なのだそうだ。そのような声は、活動の後に学生たちとシェアをする。みんなが災害について考えるきっかけになれば、と青山さんは話す。

引率の経験はあるものの、Gakuvoの学生ボランティア派遣の引率をするのは初めてだった青山さん。このインタビュー中も非常に落ち着いていて、緊張するようなタイプには見えなかったが、実は出発前日、お風呂の中で参加者たちに何をどう伝えるべきかずっと考え込むほど緊張していたのだと言う。 災害ボランティアに参加した学生たちにとっては、引率者が頼みの綱であり、その責任は重大である。その責任の重さを実感しているからこそ、学生に伝える一言にも神経を使うのだろう。

ボランティア活動で一番大切にしていること

Gakuvoボランティア活動で一番大切にしていることはありますか?

青山さん引率者は、学生と地域の方の労力と時間を預かっています。だから、双方にとってWin×Winな関係を築けるようにすることが引率者の役割だと思っています。

もちろん、その地域のためになることをしに行くんですけど、活動を受け入れてもらう方やその近所の方たちにイヤな思いをして欲しくないと思います。災害ボランティアでは特に、「盛り上がりすぎるのも良くない」、というような側面があると思います。学生たちにとっては活動日が全てなので、とにかく頑張りたいと考えてしまいがち。だけど、そこに住まれている方たちは、1~2カ月の間、毎日ずっと踏ん張ってきている。そのあたりの温度を合わせることだったりとか…。お手伝いをするボランティアも僕たちだけではないので、住人の方たちには、次に来た人たちのことも気持ちよく受け入れて頂きたい。ゴミを持ち帰る、そんな当たり前のことの裏には、そういった気持ちがあります。

学生にとっても、ただただ言われたことをやるというだけじゃなくて、何らかの学びの場であって欲しいと思います。その体験を通じて、次に自分の地域で災害が起きた時、また違う地域で災害が起きた時に、すぐに行動できる瞬発力とか、何かを掴んでもらえれば、と思っています。テレビの画面を通して感じることと実際に訪れて感じることでは大きな差がありますからね。
ただ作業を進めたいだけだったら、解体業者さんに頼めばいいと思うんです。だけど、壁を壊したこともない学生たちが一生懸命作業すること、何も知らない学生が行くことに意味がある、そこでの出会いをどっちにとっても気持ちの良いものにしたい、という想いはずっと大事にしていきたいですね。

第11陣参加者へのメッセージ

Gakuvo今回、参加された13名の学生たちにメッセージをお願いします

青山さんうーん、メッセージですか…。
そうですね。あれから3ヶ月経ってどうですか?活動した直後に振り返るのと、今振り返るのとでは、同じ活動でもぜんぜん見え方が違うと思うし、忘れかけてしまっていることがあるのであれば、是非、もう一度振り返ってみて欲しいなと思います。よければ、この地域をもう1度訪れてみて欲しいと思いますし、その後どうなっているのか調べたりすると、そこでまた感じることもあると思います。
学生一人ひとりへのメッセージとしては「元気ですか」とか、「みんな単位取れてた?」みたいなところなんですけど(笑)。あの活動で感じたことが、何かの形でみんなの「次」に繋がっていたらいいなというのが、僕の思いです。

学生時代は長いようで短いので、たくさんの経験や挑戦をして、いろんな人たち(今回で言うと被災された方や、復興のために今も踏ん張っている方など)の気持ちがわかるような人になってほしいですね。相手を思いやれる人って、懐が深くて素敵だと思うんです。

ボランティアに参加したことがない方々へのメッセージ

Gakuvo気にはなっていても、まだボランティアに参加したことがない人たちに何かメッセージをいただければ…。

青山さんボランティアと一口に言っても今はかなりいろんな種類があって、子どもへの教育ボランティアもそうですし、今回のような災害ボランティア、僕たちグッドが行っている海外支援とか、あるいは障がい者や高齢者へのボランティア、などなど。自分の中に引っかかるテーマのボランティアって、けっこうあると思うんですよ。 まずは自分が気になっていること、ムズムズしていること、自分の中で引っかかっているものの中からボランティアで検索してみると、何かやってみたいものが出てくるかなと。 僕もスリランカに行ったときは、ただただ発展途上国に行ってみたい、ってだけだったんですよ。ボランティアがしたい、って強く思っていた訳ではなかったんです。逆にあまり肩肘張らない方がいいんじゃないかなと思います。

Gakuvoみんな、けっこう真面目に考えるんですよね

青山さんそうなんです。「ボランティアとは?」とか。「私は何ができたんだろう」とか。そうじゃなくて、もし1回でわからなかったら、何回も行けばいいんだよって思います。だから難しく考えず、気軽に参加してみてほしいですね。

最後に

ボランティアには様々な側面がある。最後に青山さんは、引率者として感じたこと、今回のボランティア活動に協力してくれた現地の方のお話をしてくれた。

青山さん被災直後はメディアが取り上げてくれるので、多くのボランティアが被災地に足を運ぶけど、1ヶ月、2ヶ月と時間が経つとその数は激減し、復興に向けての活力が失われ、現地の方々も疲弊し、膨大な復旧作業にうんざりしてくる。

そんな中、元気な学生のボランティアが来てくれるのは本当に嬉しいのだそうです。実際、真備の方たちも震災が起こるまではテレビでボランティアのニュースを見ている立場で、まさか自分たちが被災し、テレビで見ていたボランティアが自分たちの町に来るなんて夢にも思っていなかった。でも、人数が減っても学生が来てくれて一生懸命活動をしてくれるのは嬉しく、「ボランティアが来てくれるのだから、我々も何かやろう」と現地の人々が声を掛け合うきっかけにもなっているようでした。

どうしてもボランティアは労働力としての側面が強い。しかし一方で、力も経験も労働力としては十分だとは言えない学生たちが、現地の方々の精神面・行動面にも影響を与えているというのは、とても重要なことではないだろうか。 途中に出てきた「本当に作業を進めたいだけだったら、業者さんに頼めばいいと思う」という青山さんの言葉が耳に残っている。「現地の方の協力がなければ今回の活動はうまくいかなかったと思います」と、青山さんは被災地の方々への感謝の言葉で締め括った。

長時間のインタビューに快く答えてくれ、ストレートに現地の様子や想いを語ってくれた青山さんに、私たちも感謝したい。

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