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グローバル・リーダーシップ・プログラム

201806/06(Wed)
グローバル・リーダーシップ・プログラム インタビュー記事

WeCare.id レポート

1.はじめに

国民の大多数がイスラム教であるインドネシアでは、国民保険制度が十分に整っておらず、全体的な医療水準は決して高いとは言えません。貧富の差が大きい国で、新聞の発表によると年間10万人以上が治療や健康健診など医療目的で出国しています。すべてのインドネシア人が各々の目的に応じて十分な医療を受けることが理想的ですが、現実には、到達が難しく、財政的に制限があり、また国民健康保険(JKN)がないため、すべてのインドネシア人が良好な保健医療サービスにアクセスできるわけではありません。

私達Alternative Social Entrepreneurship Projectが今回インタビューに訪れたWeCare.idは、最適なヘルスケアとJKNへのアクセス が必要な遠隔地や遠隔地の患者のための資金を調達するために特別に作られたウェブサイトを提供し、医療問題の解決を図っています。そこで以下、インドネシアの様々な思想を背景にWeCare.idの実態、医療問題の深刻さについて私たちの経験を踏まえて論じていこうと思います。

 

2.WeCare.idが出来た背景

WeCare.idが創立されるまで、深刻な病気を治療するための経費を調達する方法は「親族への借金」そして「その他の不特定多数のファンドレイジング」が大多数を占めていました。しかし、実際に親族からであっても莫大な金額を貸借することは難しく、ファンドレイジングはプライバシーの侵害の問題も存在し、多くの患者は病院からの帰宅を余儀なくされていました。

医療関係の仕事に就く家族に囲まれて育った創設者ギギは、ヘルスケアの問題に興味を持ち、創立に至ったといいます。当初、インドネシアでエンジニアとして働いていたギギは、方針の違いから仕事をやめて起業に至りました。彼は「利益を生み出す組織」=「Business」とは考えておらず、「何かを生み出す意識」こそがBusinessであると考えています。彼はそのような信念のもとWeCare.idを創設しました。

 

3.WeCare.idのシステム

WeCare.idは会社区分としては、Social Enterprise、そしてNonprofit with income generating activitiesに位置します。WeCare.idを通じて、ドナーは、患者のリストと情報を閲覧し、支援したい患者を選ぶことができます。25,000ルピアから寄付することによって、今なお苦しみ続けている患者たちを援助することができます。実行されたすべての取引はWeCare.idのウェブサイトにリアルタイムで表示されます。 WeCare.idはまた、BPJS(社会保障管理機関)と国民の健康サービスをより容易にする政府の国民健康保険プログラムを高く評価し支援しています。しかし、今なおJKNを持つことのできていない恵まれない人々がインドネシアには依然として存在しています。したがって、WeCare.idはJKNの所有権を提供し、恵まれない患者のJKN保険料を支払うことを業務の一環として行っています。

貧富の差が大きいインドネシアは、8億7千万以上の方が国民健康保険を所持しておらず、そのうち2億8千万の方が貧しい生活を強いられています。その一方で17億人以上の上中流階級が存在しています。しかし、彼らのうち91%が、貧困によって苦しむ人々を助けたいという意思表示をしていると言います。創設者によると、1日に約20人の方々が寄付に訪れ、寄付される金額は5百万ルピア(5万円)を超えています。また、サイトに登録をした人のの40%が寄付を行っています。この大きな数字を生み出す要因の一つには、インドネシアが宗教国家であることも挙げられます。国民の大多数である約87%がイスラム教を信仰しており、 イスラム教の中心性が顕著であるのがインドネシア社会です。そのイスラム教の五行の一つにザカート・サダカ(喜捨)があります。これは困窮者を助ける為に、義務的または任意で金品を寄付・施捨することであり、インドネシア人の日常生活を強く支配しています。インドネシアで生きるムスリムの心の中において、大変重要な存在となっている宗教は、貧困問題の解決に大きな貢献となっているといえるでしょう。

 

4.患者の実態

インタビューを行った患者は、脳脊髄液が頭の内側で過剰に留まる水頭症と脳の電気信号の伝達異常によって、突然意識を失って倒れたり、けいれんを起こすてんかんを患っていました。WeCare.idの支援のもとインドネシア大学付属病院で治療を受け続ける5歳のペトラは、細いチューブを鼻腔から通し、小さな身体に挿入していましていました。鼻腔栄養補給と呼ばれる方法で、消化管を利用して栄養を摂取する「経腸栄養法」の一つです。現状では、一人につき、一つの病気に対する支援しか適用されない為、彼は水頭症及びてんかん両方のケアをWeCare.idによって支えてもらうことはできません。また、彼は生活を送るにあたり特別なミルクを必要としていますが、その代金は保険によって保障されることはありません。そしてミルクは高額である為、

金銭的に余裕のない生活を強いられています。私たちがペトラの里親に「何か支援者に返したいことはあるか」と伺ったところ、支援いただいた方々にギフトを返したいと話していました。また、辛い環境を経験したことから、自分と同じように金銭的理由によって困窮した環境で苦しんでいる患者を助けたいと考え始めるようになったと語っていただけました。

 

5.WeCare.idのFuture plan

創設者ギギは、10年後のゴールに向けてプロセスを構築しています。WeCare.idは5年後までに病院を繋ぐこと、そして経済を共有することを可能にする経済システムの構築を目指しています。10年後までにデジタルヘルスへの移行を加速し、ヘルスケアファイナンスの非効率性を排除します。そして10年後以降にはユニバーサルヘルスケアを目指してユニバーサルカバレッジ(普遍的な報道)を実施したいと考えています。

また、WeCare.idを多くの人によりよく知ってもらうために、InstagramやFacebookといったSNSを通して積極的に広報活動を行っていくつもりだと語っていました。

 

6.私達の経験

私はインドネシアを訪れる前に、「水道水を飲むことが出来るのは日本だけだから、インドネシアで水を飲んではいけない」と知人から忠告を受けました。私達日本人が恵まれているのは水に限った話ではなく、インドネシアには交通渋滞やプラスチックのゴミ問題など数多くの渦巻く社会問題が存在します。私達はその中でも医療問題の解決に焦点を当てたWeCare.idを訪れ、創設者のpassionに触れながらSocial Enterpriseの収益を獲得する実態をリアルに知ることが出来ました。また、実際に病気で苦しむ患者に直接会って、インドネシアでの医療問題の深刻さを視覚からダイレクトに学ぶことが出来ました。WeCare.idは深刻な病気を抱えた患者のみでなく、インドネシアでの医療水準を向上させることによって病院もまた救っています。Social Enterpriseとして社会問題を解決することは容易なことではなく、様々な障害にぶつかりながらも乗り越えてきたギギの目は、しっかりと未来のゴールを見据え、インドネシアで生きる全ての方が医療問題で苦しまなくなる未来を信じていることがインタビューで読み取ることが出来ました。

 

7.おわりに

WeCare.idは、インドネシアで国民健康保険を持たず、高額な治療費に苦しんでいる人々を援助する場を提供しました。WeCare.idのシステムはインドネシアの宗教を背景に成功を収め、インドネシアの医療問題の解決に向けて貢献してきました。私たちは二つ解決策としてWeCare.idに提案したいと思います。一つ目は携帯電話からのWeCare.idシステムへのアクセスの容易化です。平成14年から17年にかけて携帯インターネットの急激な拡大により、インターネットのパーソナル化が進展しました。モバイルツールで気軽にWeCare,idにアクセスすることが出来れば、現状より確実に認知度が高まり、よりスムーズに医療サポートを提供できるようになると考えます。二つ目は海外の支援者もターゲットに含めた宣伝を行うことです。私達がWeCare.idのWebサイトを訪れたとき、WeCare.idについての基本的な情報は、英文のページもあり、読み取ることが出来たものの、患者の病名の詳細や現状といったドナー支援に関わる大変重要な情報に英語は存在しておらず、インドネシア語でしか表示されない為、私たちはもどかしい思いを抱えていました。私たちが国内ではなくインドネシアの社会問題に興味を持ったように、インドネシア国外にもインドネシアの医療問題に興味を持ち、支援したいと考えている人は決して少なくはないと考えます。世界の共通語である英語を用いて、患者の詳細を閲覧できるようになれば、より多くのサポートが得られるようになると考えます。「自分たちの食事よりも誰かの食事を、自分たちの医療よりも誰かの医療を」という信念のもと設立されたWeCare.idは、インドネシアの誰もが病気に頭を悩ませることなく笑顔で暮らしていける未来を願って、今日もまた誰かの人生が自由になるきっかけを提供しています。

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