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ジャーナル

まだ着られる服をどう活かすのか?UNIQLOのリサイクル活動の向こう側

自分達の作った服に責任を持つ

衣替えや断捨離をしていると「要らない服」や「もう着ない服」と出合うことが多々ある。
今回取材に協力していただいたのは、株式会社ファーストリテイリング サステナビリティ部 ビジネス・社会課題解決連動チームの松木志朋さん。ファーストリテイリングでは、お客様のもとで不要になったユニクロとジーユーの服を店舗で回収し、世界中の服を必要としている人たちへと送っている。

誰もが一着はユニクロ、ジーユーの服を持っている、そう言っても過言ではないかもしれない。
不要になった服のチカラを最大限に活かすこと。
服をリユース(※3)して活かすために、今私たちに何ができるのだろうか。
そんな服たちの”終着点”を伺った。
※3 リユース:再使用すること。そのままの形体でもう一度使うこと。リサイクル:廃棄物や不用物を回収・再生し、再資源化、再利用すること。

ファーストリテイリングの思いの原点は、次に服を着る人の気持ちに寄り添うことであった。

せっきー:「全商品リサイクル活動」(※4)の目的、始められた動機について聞かせてください。

※4 「全商品リサイクル活動」:
お客様のもとで不要になった服を、ユニクロ、ジーユーの店舗に設置されたリサイクルBOXで回収し、世界中の服を必要としている人たちに届ける活動。また、リユースしない服は燃料として活かす取り組みも行っている。

松木さん:全商品リサイクル活動の前身は、2001年に開始したフリースのリサイクル活動です。
当時、フリースは比較的高価な商品だったのですが、ユニクロが豊富なカラーバリエーションと、1,900円という手に取りやすい価格で販売したところ、フリースブームと呼ばれるほど、お客様から非常に大きな反響をいただきました。
それをきっかけに弊社は大きく成長することが出来ました。その時に、売った服に対して、売りっぱなしでいいのか。”自分たちの服を最後までちゃんと責任を持つべきなのでは”という思いも生まれました。そこで、まずフリースのリサイクルから開始したのです。

当初は、集めたフリースの素材(ポリエステル)をリサイクルしようと考えていたのですが、実際に服を集めてみると状態が非常に良かったんですね。
お客様がすごくきれいに着てくださっていて、さらに洗濯して持って来てくださっていたので、まだまだ着られる状態の服がほとんどという状態でした。これをまた素材に戻して作り直すというのは「もったいない」というところから、リユースに舵を切ったのです。

そこで2006年からはフリースだけでなく、ユニクロのすべての商品を回収するようになりました。そして同時にその服をどこに届けるのかを検討しました。世界で服を必要としている人たちにお届けしたいと考えた時に、世界各地で難民の方々が着の身着のままで国を追われ、「明日着る服もない」状況が起きていると知りました。そこで、2007年より、UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)と一緒になって難民の方々に服を届けることにしたのです。

本当にいい服を、必要な人へ

日本に住んでいる私達からすると「難民、避難民」は遠い存在のように感じる。
その時1つの疑問が浮かんだ。
「自分の服がどんな風に、どんな人へ届けられるのだろう。」
この疑問を感じるのはきっと私達学生記者だけではないはずだと思い、聞いてみた。

 

まっちゃん:現地に送られる服は、どのように行先の選別をされているのでしょうか。

松木さん:リユースした服の行先は、基本的にニーズに合わせて決めています。難民や避難民の方々の場合で言うと、グローバルパートナーシップを結んでいるUNHCRからどこそこのキャンプで服を必要としていますとか、このエリアに何万着必要で、女性用のトップスが足りないとか、各地で必要としている数量の要望があがってくるので、それに沿って出荷しています。

せっきー:世界各地に送られた服の点数について調べたところ、アフリカに届ける服の点数が多いことがわかりました。アフリカに対する支援の比率が大きいのはなぜでしょうか。

松木さん:アフリカからの要望が非常に多いからです。アフリカに次いで要望が多いのは、内戦が続くシリア近辺ですね。古着を受け入れていない国もあるので、必ずしも難民の数と比例するとは限りませんが、大きく言うと、お送りする服の点数が多いという状況になっています。

せっきー:現地に古着を受け入れていない国というのはどんな理由があるのでしょうか。

松木さん:宗教的に古着を着てはいけないという国もあります。もしくは、国の産業を守るためということもありますね。その国の服飾産業を守りたいので他の国からの古着は受け入れないという理由です。

せっきー:社員の方も現地での活動に実際に参加されることがあると、ホームページ上で拝見しました。参加することに積極的な方は、学生時代からボランティアなどに関心を持たれていたのでしょうか。

松木さん:活動に興味を持つ社員も最近多くなりました。弊社が採用活動で接する学生さんたちも国際問題やボランティア、社会貢献などに興味のある方が非常に増えてきたと思います。会社としても入社後に、そうした活動を積極的にサポート出来ればと思っています。

また、衣類を店舗に持ってきてくださった時に私たち社員へ「よろしくお願いしますね。」と声をかけて下さるお客様もいらっしゃいます。そうしたお声を聞いた社員が、我々が受け取った古着の行先はどうなっているのかと、興味を持つことがあります。店頭で直接お客様と接しない社員の中にも、この商品の行先を最後まで見届けたいという思いを持つ者もいます。実際に現場で生の声を聞いたりだとか、自分の責任を持った商品だったりすると興味を持つのでしょうね。

せっきー:現地に行かれる社員の方は、どのような活動をされているのでしょうか。

松木さん:現地の方に服をお渡しする以外にも、いろんなことをやっています。現地の方と交流という意味ではいろんな方にインタビューしたり、いくつか難民避難民の方々のご自宅にお伺いして生活の様子、避難生活について勉強したり。その他にも現地で活動しているUNHCRなどの色んな支援団体から現地の状況を伺ったり、難民のシェルターや病院などを訪問し、どういった支援サポートがあるのかなども勉強しています。ただ服を届けるということだけでなく、その国における難民支援を統括的に学んでいます。

服のチカラ、人とのつながり

お客様から服をお預かりすること。活動をするうえで当たり前のことにも、外からは見えない思いが込められていた。果たしてその思いとは。

まっちゃん:商品を回収する際に、郵送してもらうなどの方法もあると思います。しかし、店舗で回収という形のみを取られている理由を教えてください。

松木さん:ユニクロ、ジーユーでは店舗へ来てくださったお客様との接点の場にしたいと思っています。家から発送出来れば楽だとは思うのですが、ちょっと味気ないと思いまして。私達は色々な場所にお店を構えさせて頂いて、その地域の方々と繫がるというところもすごく大切にしているので、地域の店舗にぜひ足を運んでいただきたいという思いからこだわって続けていますね。
また、品質管理の部分で言うと、服の中に何かが混ざっていたり、ポケットに何か残っていたりしないか、1枚1枚店舗スタッフが確認する必要があるため、郵送ではなくてお店での受け取りとさせて頂いております。

まっちゃん:この全商品リサイクル活動では、ユニクロ、ジーユーの服だけを回収しているというのを拝見させて頂いたのですが、それは何故なのでしょうか。

松木さん:この活動のもともとの始まりが、自分達が作った服に責任を持つというところから来ています。また、品質に責任の持てる自社製品で支援をしたいと考えています。ユニクロもジーユーも非常に多くの服を生産していますが、弊社の服は誰でも着られるライフウェアというコンセプトを掲げていますので、誰でも日常着として着られ、長く着ていただけるというところから、支援物資として適しているのでは、と考えています。

まっちゃん:先日、ユニクロに着ない服を届けに行きました。その際リサイクルBOXの中を見たらかなりの服が入っているように見えたのですが、既に色んな方が参加して下さっている状況なのでしょうか。

松木さん:そうですね、回収量は伸びていますね。ゆっくりではありますが、少しずつ認知度が上がってきていますね。

 

ユニクロは難民の方々への衣料支援だけでなく、自立支援も行っている。
2016年からUNHCRに3年間にわたり1000万ドルを支援し、うち550万ドルが自立支援プログラムにあてられている。縫製技術やパソコンスキルなどの向上を目指した職業訓練プログラムを通じて、難民たちの生きるチカラを支援したいと考えているそうだ。

「全商品リサイクル活動」。簡単にいえば、誰かが預けた服を誰かが着るための手助けといえるだろう。しかし、そこにはただ服を運ぶだけではない、様々な人たちの思いが詰まっていた。もし、難民と聞いてすごく遠い問題だなと思うのであれば、まずはユニクロ、ジーユーの役割を知ることから始めてもよいと思う。そこから、服を必要としている人たちとの心理的な距離も少し近づいていけるのではないだろうか。

日本では当然のように手に入る「服」。
それに焦点を当て、社会課題について理解を深められた3か月であった。
近頃、難民の話を日本でもよく耳にする。こうした情報が、私たちと彼らの心理的な距離を近づけ、ユニクロ、ジーユーの「全商品リサイクル活動」の協力者が増えている一つの要因なのかもしれない。
一方で、彼らが必要としている支援の具体的な情報はあまり浸透していない気がする。そうした具体的な情報が分かれば、各地のニーズに合った服の回収が見込めるのではないのだろうか。
私たちは、そうした情報を各種メディアから積極的に入手し広く発信することで、今回取り上げた現地の子どもたちの服不足をはじめ、様々な課題の改善に貢献できると思う。

ご協力

株式会社ファーストリテイリング
https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/

 

取材元:Gakuvoジャーナル編集部