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ジャーナル

若原先生に聞いてみた!学生に寄り添うための 教員の苦悩

若原 幸範先生
聖学院大学政治経済学部政治経済学科准教授

オンライン授業になって戸惑ったのは、学生だけではなく先生も同じでした。そこには、 学生と共に悩み、模索する先生の姿がありました。
先生のリアルな苦悩を聞き、私たち学生も「つらい」「キツい」というだけではなく自分から学ぼうとする努力が必要だと感じました。
そこで、学生と先生、お互いの本音を言い合ってみました。

はじめに

玉之内:まず先生が今学期聖学院で受け持っている授業の科目を教えていただけますか?

若原先生:はい。今学期受け持っているのは、演習科目(ゼミ)が2つ、講義科目が1つ、他にオムニバス科目が2つです。

玉之内:現在の授業形態はどんな感じになっていますか?

若原先生:今は大学全体としてオンラインで実施しているので私の授業もオンラインで実施しています。どの科目もWeb会議ツールを使用して、リアルタイム双方向型※を基本に実施しています。ただ、今学期は大学として3回「対面授業週」を設定していて、その週はゼミを対面で実施することになっています。対面授業週は9月、11月、12月にあり、私の授業では「感染への不安がある人はオンラインで参加しても良い」ということにしました。そうすると、9月はほぼ全員、11月は約半数が教室へ来ましたが、特に感染の第三波が来た12月には誰も来なくて、教室から私一人でオンライン配信する形になりました。

※現在実施されているオンライン授業は主に以下の3つ

①オンデマンド
事前に先生が授業をビデオ収録し、それを学生が好きな時に視聴する形式
②リアルタイム一方向
先生と学生が同時にオンラインに接続し、先生がその場で講義をするが、学生は発言はできず、先生が一方的に講義をする形式
③リアルタイム双方向
先生と学生が同時にオンラインに接続し、先生が講義をし、学生も発言やディスカッションができる形式

先生の苦労と工夫

古橋:オンライン授業やオンデマンド方式をやっていると思うんですけど、正直一番大変なことは何でしょうか?

若原先生:5月からオンライン授業が始まったんですけど、当初一番心配だったのは、学生側に受講できる体制が整っているのかということでした。パソコンを持っているのかから始まり、自宅にインターネットの環境があるかとか、そこが一番心配でした。 教員側としては、オンライン授業は初めての経験だったので、一から勉強しなければならず、そこは苦労しました。その苦労は私だけでなく、多くの先生も同じでした。そこで、先生同士の情報交換や研修のようなものが行われました。同じ大学内だけでなく、Facebookのコミュニティ等もあって、そういうところで学び合ったり助け合ったりしながら取り組んで、なんとかやっていけているのかなというところです。

古橋:オンライン授業を始めるまでにもご苦労がありますね。

若原先生:授業中の苦労は学生の顔が見えないことです。聖学院大学の場合は、プライバシーへの配慮を重視して、基本的には双方向型の授業でも学生の顔は映さない原則になっています。顔が見えないと反応がわからないので、私の言っていることが伝わっているのだろうかというのは常に心配しながら続けています。そこが一番難しいところです。

古橋:学生の反応が見えないという部分で、何か対策はされていますか?

若原先生:チャットで質問してもらったり、スプレッドシートを使って匿名でも質問できるようにしていますが、中々書いてくれないですね。リアルタイムで反応を掴むのは難しいなと感じています。そのため、リアクションペーパーでのやり取りを強化して、UNIPAという学生支援ポータルを利用して感想や質問を書いてもらい、一人一人にコメントをつけて返しています。また、他の学生とシェアしたい質問や感想に対して、次の授業の冒頭にコメントする、ということをやっています。

古橋:様々なツールを駆使していますね。

若原先生:そのようなことで、なんとか学生たちとコミュニケーション取りながら授業を進めているという状況です。上手くいっているかどうかは受講生に聞いてみないと分からないですが、リアクションペーパーの様子を見ると皆さんそれなりによく考えて書いてくれていて、最近は授業冒頭に取り上げる質の高い質問や感想が多くなり、コメントするのに30分以上かかるようになっています。そういう意味では、ある程度は機能してくれているかなと思います。

古橋:やはり工夫をされてると。

課題の量と学生の感じ方

玉之内:学生からは、課題が増えたという意見が多いんですけど、実際先生としてはどういったお考えですか。

若原先生:課題学習型やオンデマンド型だと、それぞれに課題を出しているので、それが重なってしまうときついという声は私も聞いています。それは大学としても問題ととらえています。特に春学期は教員側もオンライン授業が初めてでしたので、あまり他の授業の課題量まで気にかける余裕がなくて、こういう問題が起こってしまったのだろうと思います。その反省を踏まえて、最近はある程度調整出来てはいるのかなと思います。 実際に授業を受けているお二人はどう感じていますか。

古橋:私の大学も対面のときよりもオンラインの方が課題がものすごい量出るので正直困っています。

若原先生:教員としては、しっかり学んで理解してほしいという想いが強く出てしまい、結果として課題が多くなってしまう場合も多いのだと思います。

玉之内:やはり、先生方で学校全体とかで話し合いなどはされたのですか?

若原先生:そうですね。授業評価アンケートなどで、課題が多いとかきついという声が上がっていたので、そこは大学全体としてちゃんと調整していかなければいけないと話し合いました。具体的には、課題の締め切りまでの期限を1週間くらいは確保するようにするだとか、レポートの文字数も期末試験レベルの量を毎回出していたケースもあったので、そこは減らしましょう、というようになっています。

玉之内:レポートだけだと、成績評価基準がわからなくて苦労をしました。

若原先生:そこも問題になっていて、課題を出しっぱなしで、その後の先生のリアクションがない授業もあるという学生たちから不満の声は挙がっています。そのため、秋学期はしっかりフィードバックをしましょう、と大学内で確認はしました。そもそも、評価についてはオンラインに限らず、基準を明確にすることが必要です。特にレポート課題は評価基準が分かりにくくなりがちですので、学生への丁寧な事前説明やフィードバックをする努力が重要だと思います。私の場合、最近はルーブリック(注1)を使った評価を試みています。
注1:学習の達成度を測るための評価方法の一種。テスト形式での方法では評価が難しい観点を適切に評価することができる。

授業準備に要する時間は?

古橋:オンライン授業の準備にかかる時間はどのくらいですか?

若原先生:オンライン授業に限りませんが、私の場合、去年のものをバージョンアップして授業する場合には1コマ当たり2〜3時間、それに加えてリアクションペーパーへのコメントに1〜2時間くらいです。新規科目など新しく授業を作る場合はその2~3倍かかります。

古橋:それはかなりの負担じゃないのかと思うのですが…

若原先生:すごく大変ですよ(笑)。授業期間中はほとんど授業に時間を使う感じです。

古橋:やはり、対面授業と比べてオンライン授業の方が大変ですか?

若原先生:私の場合はリアルタイム双方向型でやっているので、そこまで変わらないです。ただ、私も何度か実施していますが、オンデマンド型の場合は収録や編集の時間があって、もっと大変です。他には、資料を早めにアップしないといけないのでそこは普段より大変かもしれません。逆に紙の資料の印刷や持ち運びがなくなるなど、楽になった部分もいくつかあります。また、パソコンの得意不得意もあると思うし、負担感は人によってそれぞれだと思います。

学生アンケートの結果を受けて

若原先生:学生の意見が一つじゃなくて、オンラインになって「分かりやすくなった」という声もあるし、「わかりづらい」とか「つまらない」との声もあって、学生の意見が一律でないところが教員側としても対応が難しいところです。私の周りの学生に話聞いても、例えば遠距離通学をしている学生は移動が大変なのでオンライン授業を続けてほしいという声も半々くらいで上がってきています。 授業はオンラインでも良いと思う部分もありますが、学生同士が会えないというところは問題と思っています。だから授業の問題と、大学に来られるかという問題は別に考えたほうがいいと思います。あとは、学費の問題もありますね。

玉之内:そうですよね、施設費は結構大きいですよね。

若原先生:やっぱりそう思いますよね。学生さんの気持ちも感覚的にはものすごく良く分かるのですが、学生が来なくても施設には維持費がかかりますし、学生が戻ってきた時に必要な本や設備がないということでは困りますから、大学を経営する側からするとやむを得ないところです。でも学生たちの大変さも良く分かるので、聖学院大学では、全学生に一律60,000円給付して、オンラインでの受講環境を整えてもらったりしています。できる限りのことはやっているつもりですが、学生さんが納得できるかどうか・・・。 二人はオンライン授業の感想はどうですか?

古橋:私は授業面でいうとオンラインで良かったと思っています。オンデマンド型だと分からないところは何回も見られますし、学びはオンラインの方が深いと感じます。友人と会えない寂しさはもちろんあるんですけど、自分のペースで学べるので、学習の面ではこのままがいいです。

若原先生:確かにオンラインにはオンラインの良さがありますよね。オンライン授業も新しい授業形態としてこれから定着していくと思います。私の周りの学生にも、オンラインになってから成績がものすごい良くなった学生もいるし、合う・合わないもあると感じます。

玉之内:私もボランティアなどの活動ができないという面では困っていますが、授業がオンラインになったことで良いこともたくさんあって、一つの課題にかけられる時間が増えたので深く調べるようにはなりました。私はテストが苦手なので、レポート形式の方が助かっています(笑)。

若原先生:学生も本当に多種多様でどうやって指導しようか悩みますね。

古橋:授業だけでなくて、就活もどっちもどっちです。交通費がかからないのは勿論ありがたいことなんですけど、企業の雰囲気とかが分からないので苦労しています。

若原先生:そうですよね、一方的に学生が見られるだけになってしまいそうですね。

玉之内:では、学生アンケート見てみてどうですかね。

若原先生:やっぱり意見が割れてますね。多様な学生がいて多様なニーズがあるというのが、これで明らかになっているので、そこに応えるような教育方法を大学は考えていかないと、と思います。二人は大学に要望などありますか?

古橋:そうですね、もう少し就活の支援を手厚くしてほしいというのが正直なところです。

玉之内:友人と会いたいなと思うのと、勉強は一人だと限界が来るので友人と共有したり考え合いたいです。

大学生のみなさんへ

古橋:最後に、このコロナ禍で途方に暮れている学生もいると思うのでメッセージをいただきたいです。

若原先生:まず学生の皆さんは様々な面で大変な想いをしていることと思います。一方で、教員としても悩みながらなんとかやっている状況ですので、コロナ禍のなかでの苦労や悩みは学生の皆さんと共有しながら一緒に頑張っていきたいと思っています。その上で、大学という場所は常に開けた場所だということは強く伝えたいと思います。特にキャンパスに来られない状況では、自分から声をあげたり行動するのはなかなかハードルが高いかもしれませんが、勇気を出して一歩踏み出してほしい。大学には皆さんの悩みや要望を受け止め、サポートしてくれたり一緒に動いてくれる教員や職員、そして学生たちが大勢います。それは、あらゆることがオンライン化している現状でも変わりません。特に今年の新入生の皆さんは期待していた大学生活を送ることができず、本当につらい想いをしていると思いますが、大学としては皆さんの期待に応えられるよう責任感を持って取り組んでいますので、ぜひ飛び込んできてほしいと思います。そして、いずれ本来の大学生活を送ることができるようになる日を心待ちにしながら、今のこの厳しい状況を一緒に乗り越えていきましょう。

古橋:本日は本当にありがとうございました。

 

 

取材元:Gakuvoジャーナル編集部