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ジャーナル

Gakuvoボランティア奮闘記 ②~ オンラインでは決して体験できない、五感を刺激するボランティア~

日本財団学生ボランティアセンターGakuvoは、全国で緊急事態宣言などが解除されたタイミングで、徹底した感染対策のもと、2021年10月29日からの3日間、いわき市でのボランティア活動を再開しました。現地での活動は実に624日ぶりとなります。

連載第1回では、Gakuvo、いわき市のボランティア受け入れ先それぞれに、624日ぶりの現地活動について率直な気持ちをうかがい、再開への喜びの声を聞くことができました。

本記事では、10月30日から10月31日にかけて行われたボランティアの様子をリポートします。いわき市を訪れるのはもちろん、現地でのボランティアに参加するのが初めての学生も多いなか、どのような活動になったのでしょうか。

2日目と3日目:オリーブ農園での収穫・選別作業

雲一つない晴天に恵まれた10月30日の午前8時半、学生たちが続々とホテルのロビーに集まってきました。今回は毎朝、自室での抗原検査とロビーでの検温が徹底され、出発前に入念な体調確認が行われます。活動には地元の看護師も帯同し、急な体調不良など万が一の事態にも備えました。

抗原検査と検温の結果、全員異常がなく、ひとまず安心。バスに乗り込み、最初の目的地であるオリーブ農園を目指します。オリーブ農園は、2日目と3日目と2日間にかけて収穫作業の手伝いをします。

感染対策のため車内で学生が声を発することはありませんでしたが、昨日よりもさらに大きな期待感がバスに充満しているように感じました。

ホテルから農園へ向かう道中、前方に大きな川が目に入ります。いわき市を横断し太平洋へ流れ出る夏井川です。この夏井川は、2019年に発生した台風19号「令和元年東日本台風」の集中豪雨により決壊・氾濫し、約5300もの住宅が被害に遭いました。

現在も災害復旧・改良工事が続けられており、この日も川岸にショベルカーや作業を行う人の姿が見られ、自然災害の傷跡の深さをまざまざと感じました。

ほどなくして、バスはオリーブ農園の入り口へ到着。3分ほど畦道を歩くと、たくさんのオリーブの木が見えてきます。

学生たちを笑顔で迎えてくれたのは、オリーブ農園を営むNPOいわきオリーブプロジェクト理事長兼いわきオリーブ株式会社代表の松﨑康弘さんです。集まった学生への第一声は、「皆さんを待っていました」。シンプルながら、暗く長かったこの1年9ヶ月間の思いが込められた力強い言葉でした。

オリーブ農園では、10月30日と10月31日の朝から夕方にかけて、主に収穫と実の選別を行います。学生のほとんどが初めてのオリーブ収穫です。緊張した面持ちで松﨑さんによる作業の説明に耳を傾けていました。

 

途中、松﨑さんから学生へ「オリーブの実を食べてみて」との声かけがありました。促されるまま男子学生が若い緑の実を口に入れると、とたんに渋い顔に。すかさず松﨑さんが「緑の実を食べると彼のような表情になります」と解説。笑いとともに一気に場の雰囲気は緊張感が和らぎました。

 

もしこれがオンラインであれば、「若い緑の実は硬く、苦味や渋みが強い、熟した黒っぽい実は油分が多く苦味や渋みはほとんどない」と説明を受けて終わりでしょう。オリーブの実を食べて苦いと感じる、そんな小さなワンシーンも、現地でしか味わえない体験です。

松﨑さんからの説明終了後、いよいよチームに分かれ収穫を始めます。バスの中では原則会話が禁止されているため、学生同士がコミュニケーションを取るのは、今回のボランティアで初めてです。同じチームになった学生たちは「どこの大学ですか?」「何年生?学部は?」とお互いの自己紹介をしながら作業を進めていきました。

午前中の作業を終えるとランチタイムへ。ここでも感染対策のため、互いに向き合わず黙食が徹底されています。食後は農園のオリーブを使ったクッキーや飴、お茶の差し入れもあり、学生からは口々に「美味しい」という声があがっていました。

午後からは、収穫作業と並行して、収穫した実の選別作業も行いました。オリーブ固有の病気である炭疽病(たんそびょう)や虫食いがある実をはじき、ヘタを取ったら搾油に回されます。

慣れない農作業ながら、学生たちは楽しそうにそれぞれの作業にあたっていました。

自身で収穫・選別したオリーブオイルは格別の味

最終日となる3日目も、事前の抗原検査と検温を済ませ全員でバスに乗り込みました。この日もオリーブ農園での収穫と選別作業を行います。2日目と比べて学生たちは慣れた様子でスムーズに収穫作業に入り、1本の木が終わると「次はどの木の収穫をすれば良いですか?」と積極的に松﨑さんへ質問していました。

この日の天気はあいにくの曇天でしたが、2日目よりもお互いの距離がぐっと縮まった学生たちの明るい笑い声が、曇り空を吹き飛ばすように農園に響き渡っていました。

作業終了時間となると、松﨑さんの計らいで、作業から戻ってきた学生たちへ、2日目に収穫・選別した実から搾油したオリーブオイルがふるまわれました。この嬉しいサプライズに、学生たちからはわっと歓声があがります。

今回収穫したオリーブは青い実が多く、フレッシュさを感じる仕上がりになっているとのこと。できたてのオリーブオイルは風味豊かで、甘さのなかに少しの渋みを感じました。自分たちが汗を流して、その手で収穫した貴重なオリーブオイル。学生たちは大切に、大切に味わっていました。このオリーブオイルの味は、生涯忘れることはないでしょう。

2日目・午後:講話を聞くため長源寺へ

2日目のオリーブ農家での作業を終えた一同は、次の目的地である長源寺を目指します。長源寺では、副住職である栗山周桂さんから、東日本大震災や令和元年東日本台風が発生した当時のいわき市の様子をうかがいます。学生の様子から話す内容をその場で判断するという栗山さん。この日は東日本大震災の話を中心に講話が行われました。

多くの人の人生を変えた東日本大震災。栗山さん自身も多大な影響を受けた1人です。

「震災時、福島県内の子どもたちは全員甲状腺検査を受けなければなりませんでした。すべてが原発の影響とは言えないかもしれませんが、検査にひっかかる子どもは一定数いて、当時小学5年生の息子もそのなかの1人でした。そのあとの6年間は毎年、福島医大(福島県立医科大学)へ検査に通っていました」

震災の直後、栗山さんは息子さんを叔母に預け北海道へ避難させていました。3週間程で呼び戻したものの、検査の結果を受け「なぜ北海道から戻してしまったんだ」と後悔の念に駆られたと話します。実際に、震災のために県外へ出ていき、そのままそこに定住した人は少なくありません。

また、栗山さんはいわき市災害ボランティアセンター避難所支援班として避難所へ訪問していました。そこで、津波で家が流され、今着ている服と財布以外すべての財産を失った人、家族やペットを亡くしてしまった人など過酷な状況に立たされる多くの被災者の話を聞いてきました。

避難所は、ピーク時1人あたりのスペースが1畳もなく、ぎゅうぎゅうのすし詰め状態だったと栗山さんは振り返ります。各個人のスペースをあらわす仕切りもないなかで、就寝時には真横に知らない人が寝ており、気を遣って音も出せない、寝返りもうてないといった状況が続きました。

たった1日で、これまで当たり前にあった日常が一変する――。栗山さんは、同じことがいつどこで起きるかわからないと話したうえで、「福島に住んでいた、それだけで人生が変わってしまった人が大勢いると、心のどこかに置いてほしい」と学生たちへ伝えました。

また、学生たちには「知らない人に気持ちを向けられるようになってほしい」と話します。今後、現場へ行ってボランティア活動を行うのは、就職などライフステージが変わることで難しくなるかもしれません。しかし現場に行けなくても、たとえば万が一、今回集まった学生の地元で災害が起きたとしたら、まずは「大丈夫?」と声を掛けたり、仲間内で声を掛け合って支援金を送ったりすることはできます。

また、普段から募金をするなども立派なボランティア活動です。小さな支援だとしても、支援を受けた側は感謝の気持ちを絶対に忘れません。そして、支援をした人がもし困っていたら、今度は恩返しをしようと考えます。栗山さんは、ボランティアは感謝と恩返しの繰り返しなのだと強調しました。

講話のあとは、身動きが取れなかった避難所での生活を少しでも体感することを目的に20分間の坐禅を行いました。ヨガで瞑想をする際の(あぐらのような)形で足を組み、手は法界定印(ほっかいじょういん)と呼ばれる形に組んでお腹の前へ。姿勢をぴんと正したら一切動くことが許されません。避難所の生活とは比べ物にならないほど短い時間ながら、動いてはいけない状況は肉体的にも精神的にもとても苦しく、途方もなく長い時間に感じました。

希望者には、栗山さんのもつ警策(きょうさく)で肩を叩かれる体験も。物音一つない室内に肩を叩く「パンッ」という音が響くと、空気がピシッとしまったのがわかりました。

まとめ

オンラインでのやり取りにも抵抗がなくなってきた昨今ですが、活動中の学生の明るい表情や、講話中、真剣に耳を傾ける様子を見て、やはり現地でしか味わえない空気はあると改めて感じました。

オリーブの収穫、実の選別、オリーブの味、木や土の匂い・手触り、坐禅の辛さ、震災を経験した人からの生の声――。そして、いわき市の方々や学生同士のリアルな場での交流そのものが、貴重で喜ばしい出来事として学生たちの記憶に刻まれたことでしょう。

2泊3日の活動を終えた学生たちは今、何を思っているのでしょうか。連載第3回では、学生たちの率直な思いやボランティア活動の今後の展望について迫ります。

掲載写真について:撮影時のみマスクを外しています。

取材元:Gakuvoジャーナル編集部