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ジャーナル

Gakuvoボランティア奮闘記 ③~ 手の届く範囲で続ければ良い。2泊3日の活動で見えてきたボランティアの未来~

日本財団学生ボランティアセンターGakuvoが主催するチーム「ながぐつ」プロジェクトは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、長期にわたり現地でのボランティアが難しい状況が続きました。

そして、最後に現地での活動を行ってから624日後となる2021年10月29日。全国で緊急事態宣言などが解除されたタイミングで、徹底した感染対策のもと、再び現地を訪れることができたのです。

2泊3日の活動を終え、学生たちは何を考え、Gakuvoや受け入れ先は学生に対して何を思っているのでしょうか。それぞれの立場から、今回の活動の振り返りや今後のボランティアの展望を聞きました。

震災で何もできなかった分だけ、今、誰かの役に立てたら

福島市出身の佐藤真由香さん(東北福祉大学3年)は、小学4年のときに東日本大震災を経験しました。幸い本人や家族、友人にケガはなかったものの、震災直後から不便で情報も少なく不安な状況の生活を強いられることになります。佐藤さんは、被災経験を経てボランティア参加への思いが一層強くなったと言います。

「震災後しばらくは福島市内から出られなかったのと、家族からも1人で出歩かないように言われていたのでずっと自宅で過ごしていました。生活に必要な買い出しは父や6歳上の兄が行ってくれていましたね。当時を思い返すと『何もできなかった』という記憶が残っていて。その分だけ今、困っている人の役に立ちたい気持ちが強くあります」

大学生になり、より一層ボランティアに打ち込もうと考えた佐藤さん。これまでも2019年に発生した令和元年東日本台風の被害が大きかった宮城県丸森町や同県大郷町で土砂かき出しのボランティアに参加してきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学1年の冬から活動ができなくなり歯痒い思いをしてきたそうです。

そのなかで、Gakuvoがオンラインでボランティア活動を行っていることを知り、すぐさまオンライン版チーム「ながぐつ」プロジェクトやプラチナ未来人財育成塾にチューターとして参加。「現地に駆けつけることはできなくても、オンラインで困っている人の役に立てればと思い参加しました」と話しました。

そして今回の現地ボランティアでは、自身も被災経験がある立場として、長源寺で聞いた講話が印象に残ったと言います。

「私は今回の参加者のなかで唯一生まれも育ちも福島県なので、栗山さんのお話のなかにあった甲状腺検査も受けていて、結果は毎回要観察だったんです。震災から10年が経ちますが、今でも不安です。震災当時の記憶が薄れていくなかで、今回栗山さんのお話を聞き、震災や放射線への考えを見直した学生も多かったのではないかと思います」

そして今回のチーム「ながぐつ」プロジェクトについては、「オンライン版に参加した際も、いわき市への台風の影響や現状をうかがいましたが、やはりオンライン上では聞けないこともありました。現地では会話のなかでわからなかったことが聞けて、見るだけではなく実際に色々な経験ができて本当に良かったです。はじめは、自分だけ現地から1人で参加したので馴染めるか不安もありましたが、1人参加は自分だけではなく、同じ不安をみんな抱えていたことがわかって距離が縮まりましたね。ここでは年齢に関係なくみんなと仲良くできて嬉しいです」と、楽しく活動を終えられたと笑顔で語りました。

「みんなが楽しそうでほっとしている」

日本大学4年の中田諒さんは、今回参加した学生18名のなかで唯一、コロナ禍前にいわき市でのボランティア活動に参加しています。

日本大学4年の中田諒さん

Gakuvoの元インターン生でもある中田さんは、オンライン版チーム「ながぐつ」プロジェクト当日や準備のサポートを行うなど、運営のお手伝いとしても活躍しています。

中田さんは久しぶりの現地活動について、「現地で開催したいという話は4月頃から聞いていました。8月ごろに感染者が増えた際は『難しいんじゃないか』と思いましたが、無事にここまで来られて本当に良かったです。オリーブ農園のお手伝いは初めてでしたが、長源寺は前回もうかがい栗山さんのお話を聞いたり、坐禅を体験したりしました。今回1年9ヶ月ぶりに再開した陣に参加して、もちろん自分も楽しいし嬉しいのですが、一部の企画に携わったので、参加する学生の様子が気になっていました。周りを見るとみんな楽しそうでほっとしています」と安堵の表情を浮かべました。

活動再開までの一部始終を間近で見ていた中田さん。今回の徹底された感染対策についてこう話します。

「やはり参加に対する不安がありました。団体で動くので、自分を含め誰か1人でも感染していたらどうしよう、現地にウイルスをもっていったらまずいと思っていて。でも、参加者は10日前から検温して報告したり、事前のPCR検査をしたり、毎朝抗原検査をしたり…対策が徹底されているので、元々あった不安も解消されましたね」

プレゼンに向けて

今回は活動と並行して、チーム「ながぐつ」プロジェクトの活動や松﨑さんが育てるオリーブをどのように広めていくかを考えるミッションが学生たちへ与えられており、後日プレゼンが予定されています。2日目の夕食後、4つのチームに分かれて作戦会議が行われました。ここでも感染対策のため、自室からオンライン会議へ接続します。

会議では、「訴求ポイントは2~3個にしぼった方がわかりやすいんじゃないかな?」「松﨑さんの人柄を伝えたいから、明日取材してみよう!」など、活発に意見が飛び交っていました。さくさくと資料作成に取り掛かるチーム、悩みながら意見交換をするチームなど進み方は様々でしたが、最終的には各チーム、プレゼンのヒントが見えたようです。

ボランティア終了後もチームごとに打ち合わせを重ね、11月14日のオンラインプレゼン当日に臨みました。SNSやインフルエンサーの活用を提案したチームがあったり、オリーブの魅力を伝える動画を手作りしたチームがあったりと、個性豊かなアイデアが次々と発表されました。

松﨑さんからのフィードバックでは、商品と一緒に活用レシピを同封するアイデアを試してみたいと、学生のアイデアを実現化するような前向きな発言もあり、チーム「ながぐつ」プロジェクトやいわきオリーブのさらなる飛躍につながるプレゼンになっていたのではないでしょうか。

この時間を楽しいな、楽しかったなと感じてもらえれば

ボランティア受け入れ先の一つであるNPOいわきオリーブプロジェクトは、市の新しい特産品づくりを目指して、北限を超えたいわき市では難しいと言われたオリーブ栽培に2009年から取り組んでいます。そこで見事に栽培を成功させ、2021年現在、いわき市内だけで65ヶ所、6500本が植栽されています。

プロジェクトの理事長兼いわきオリーブ株式会社代表の松﨑康弘さんは、「いわきオリーブプロジェクト内での自身の役目」は2020年ごろに完結している予定だったと話します。

「2009年からプロジェクトが開始して、栽培も商品化も研究会やプロジェクトのメンバーに任せられるようになってきたので、『プロジェクト内での役割はきちんと果たせたな』と考えていたんです。ただ、その矢先にコロナ禍になったことで、やり残したこと、やらなければならないことがたくさんあると気づきました。具体的には、この畑を環境や原発について学べる拠点にしたいと思っていて。2011年の震災のあと、この畑でも何度放射線測定をしたかわからない程です。でも、未だに原発はなくならないし、地球温暖化などで環境はどんどん悪化しています。そういうことを考えられるきっかけにオリーブがなれるんじゃないか――そう考えて、今それが新しい目的になっています」

NPOいわきオリーブプロジェクト理事長兼いわきオリーブ株式会社代表の松﨑康弘さん

最後に、学生に期待することを聞きました。

「コロナ禍の前は、『常識を疑ってほしい。親や先生、友達から言われたことをうのみにするのではなく、自分で考えて判断してほしい』と学生に伝えてきましたが、もう自分が言わなくても彼らは気づいていますね。今は、学生にこうなってほしいというより、この時間を楽しいな、楽しかったなと感じてもらえれば十分です。学生たちはリアルで友達と会える時間を新型コロナウイルスに奪われたなかで、今回、なにかしらの思いをもって行動した人たちが集まってくれています。そんな彼らに望むのは、楽しんでほしいということだけです」

1年9ヶ月ぶりの対面活動を終えた長源寺の副住職である栗山周桂さんは「マスクをしていても、対面だと学生の目や姿勢が変わるのがわかった」と話し、ボランティアに参加する学生への思いをこう語りました。

長源寺副住職の栗山周桂さん

「こちらが寄り添う気持ちをもつことで、結果的にまた活動に来てくれたらありがたいですね。支援というと『ちゃんとしたもの』と感じるかもしれませんが、そんなことはなく、困っている人をちょっとだけ手伝うくらいの感覚で良いんです。遊びに来るのも被災地支援ですしね。自分にできる範囲で、できることをコツコツ続ける。たくさんの人がそうなっていけば、自然と大きな力になると思います」

オンラインとリアルの良いところを活かしながら活動を続けていく

左から日本財団学生ボランティアセンターGakuvoの髙野葉朗さん、沢渡一登さん

日本財団学生ボランティアセンターGakuvoの常務理事を務める沢渡一登さんは、コロナ禍を経て今後のボランティアの在り方が見えはじめたと言います。

「状況を見ながら、今後も定期的に現地での活動は続けていきたいですね。一方で、コロナ禍を契機にオンラインの良さにも気づけました。これまでは東京に来ないとボランティアに参加できなかったのでハードルが高かったのですが、オンライン版チーム「ながぐつ」プロジェクトを開催したことで、物理的な制約を超えて間口を広げられたのは良かったですね。そのためか、今回は地方からの参加者がいつもより多く嬉しかったです」

さらに、学生ボランティアへの気持ちとして「ボランティアに参加して様々な経験をしても、すぐに目に見える変化はないかもしれません。ただ、あとからでも『あんなことやったな、あんな話聞いたな』と少しでも記憶に残ったり感じたりするものがあれば、やる意味があったなと感じますね。きっとなにかを感じられる経験ができると思います」と話しました。

またGakuvoの髙野葉朗さんも学生に対し「まずは楽しんでもらいたいですね。そのためにも、企画する立場として『また参加したい』と思ってもらえるプログラムにしたいですし、学生のフォローはしっかりと行っていきます。また、農家さんや学生同士のつながりも大切にしてほしいです。またGakuvoでは、現地に足を運ぶことで自分ごと化してほしいと言っています。たとえば福島の食材を買うとか遊びに行くとか、自分の手の届くところで今後も活動を続けてもらえれば良いなと思います。」と話しました。

まとめ

「ボランティア」というと大きな支援のようなイメージがあるかもしれません。しかし、Gakuvoや受け入れ先の松﨑さん、栗山さんは、学生に対して一様に「自分のできる範囲で活動してもらえれば良い」と話していたのが印象的でした。

一人ひとりが微力でも自分の手が届く範囲で活動を続ければ、やがて大きな波となり、それが当たり前の社会に少しずつ変容していきます。被災地支援の第一歩は、小さな意識の変化から始まるのかもしれません。

そのきっかけを学生に与えるのが目的であるGakuvoのチーム「ながぐつ」プロジェクトは、コロナ禍を経て、地方学生の参加ハードルを下げるオンライン、そこでしか味わえない経験ができるリアル、それぞれの良さを融合させた新たなボランティアの可能性を見いだしました。

学生には、今しかできない経験があります。ボランティア参加への不安は誰にもつきまとうものですが、思い切って飛び込んでみれば、それ以上の楽しさや学びを得られるはずです。次のチーム「ながぐつ」プロジェクトを作るのは、今これを読んでいるあなたであってほしいと思います。

掲載写真について:撮影時のみマスクを外しています。

取材元:Gakuvoジャーナル編集部