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ジャーナル

「軽石除去ボランティア in 与論島 ~キレイなビーチを取り戻そう!~」 で見えた軽石の現状とこれから

2021年8月13日、小笠原諸島にある海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」が噴火。
10月に入って、この噴火で噴出したとみられる大量の軽石が、1000㎞以上も離れた沖縄諸島などの海岸に漂着し、さまざまな被害や影響を及ぼしていることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

鹿児島県与論島も影響を受けた島の一つで、行政や島民ボランティアによって軽石の除去作業が進められていますが、漂着した量が甚大で、また高齢化も進む島では作業がなかなか進まず、生活面への影響が問題となっています。

この現状を受け、日本財団ボランティアサポートセンター(ボラサポ)と日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo)は共催で、4泊5日のボランティアプログラム「軽石除去ボランティアin与論島」を企画し、第1弾12月15日(水)~19日(日)、第2弾12月19日(日)~23日(木)の日程で2回、実施しました。

今回は第1弾20名(ボラサポ10名、Gakuvo10名)の活動1日目と2日目の様子をリポートします。

与論島軽石の現状

12月15日、羽田空港から鹿児島を経て与論島に上陸した一行。爽快な青空の出迎えを受け、そのまま島を西から東に横断し、皆田海岸へ向かいました。周囲約22kmの与論島には約60以上のビーチがあるといわれ、その一つです。

「うわ~」。海の青さに思わず、感嘆の声がもれます。それぞれ長靴に履き替え、日焼け対策などをしてから海岸へ。よく見ると、サンゴ由来の美しい白砂の上にグレーの軽石が層となって重なっていて事態の深刻さを実感しました。

まずは、現地のマリンレジャーのガイドなどをされているE-Yoron事務局長池田龍介さんから、軽石漂着の現状と作業方法などについて説明を受けました。

軽石は10月13日に島の海岸に初上陸、翌日には東側や北側の海岸全域で漂着を確認。

与論町軽石対策本部が設置され、10月末時点では島民らで通称フレコンバック(トン袋)6,800個分を回収したものの、試算では漂着した軽石の全量は同20,000個分で、まだ多くの海岸に軽石が蓄積しているほか、周囲の海上にも漂流中の軽石が見られる状況です。

トンパックが積まれている様子

その影響として、「島の発電所用の重油を運ぶタンカー」「基幹産業であるサトウキビの黒糖製造設備の冷却装置」「漁業や観光用の船」などが軽石を吸い込むと故障の恐れがあって運用できず、島民の生活に大きな支障が出ています。

また、浮遊中の軽石が太陽光線を遮ることでサンゴや海草が光合成できず、生育不良となる恐れもあるそうです。

「皆田海岸は周辺に無人島もある美しい観光地の一つですが、重機などが入れない地形のため、軽石除去は『人の手』が頼り。皆さんの手で、ぜひ白砂のビーチに戻してください」と池田さん。

美しい白浜をとりもどそう

活動は砂浜に広がる軽石を小袋に詰めて運び、トンパックに移すというもの。満杯になったトンパックは後からクレーン車でトラックに積まれ、仮置き場に運ばれて保管されます。集めた軽石の再利用法は農地の土壌改良用や土木工事の埋め立て用土砂などが考えられますが、「何しろ量が多すぎて」と、まずは回収優先で進められています。

回収作業はシンプルですが、軽石とはいえ、集めるとかなりの重量。また、白砂は混ぜないように慎重さも必要です。

池田さんは、「作業は短距離走でなく、長距離走と思ってじっくりと。目に入ると痛いので風上から作業を」などとアドバイス。

池田さんの説明で印象的だったのは、「軽石は悪者というイメージがありますが、実は地球の営みによるもの」という言葉です。日常生活への影響があるため除去は必要ですが、自然へのリスペクトや自然との共存のありかたにも思いをはせるきっかけとなりました。

さらに、海岸にはプラスティックやペットボトル、漁網やガラス類など、「海ゴミ」と呼ばれる漂着物もあり、軽石とは別に分類して集めていきました。劣化して小さくなったゴミを魚やウミガメなどが飲み込む事故も起こっていますから、放置はできません。

池田さんは海ゴミを拾う、「美ら島プロジェクト365」という活動の代表でもあり、与論島の各海岸に設置されている白い箱、「拾い箱」の創設者でもあります。

ゴミを捨てる箱「ゴミ箱」でなく、拾った海ゴミを入れる箱で、後日、役場の環境課によってゴミが回収されるという仕組みが整備されています。「人が来れば来るほど、きれいになる砂浜」をキャッチフレーズに、今では島民全体で取り組まれています。

「海が好き、与論島が好きだから、きれいになっていく風景を見るのがやりがい。終わりの見えない活動ですが、活動を通して多くの人とつながれることも達成感」。池田さんの言葉はボランティア活動の魅力とも重なり、胸に響きます。

今回活動する皆田海岸のビーチは防波堤をはさんで2カ所あり、二手に分かれて作業を進めます。「女性陣が袋に詰め、男性陣がトンパックまで運ぶ」「スコップやチリトリなどで一気にすくう」など、それぞれが工夫を凝らしていました。

黙々と集中して1時間もすると、白砂が目立つようになってきました。「やった~」。達成感が励みとなって、メンバーの動きもさらに勢いづいていきますが、夕暮れが近づき、この日の作業は終了しました。

地元の有志らによる朝の海岸清掃活動にも参加

与論島では、朝の海岸清掃活動も行われており、希望者は「与論島の美しい海や自然を守ろう」と活動する島民のボランティアグループ「海謝美(うんじゃみ)」の皆さんと一緒に朝のビーチをキレイにしていきました。

活動は毎朝6時半から7時半まで、約60ある島のビーチを1日1,2カ所、移動しながら漂着物などを拾っていきます。ゴミの量にもよりますが、2カ月ほどで島を1周する計算です。海謝美は4年前から活動を始めたそうですが、強制ではなく、「できる人ができる範囲で行う」ことで続いているそうです。

ゴミを拾いながら、海謝美の皆さんから与論島の歴史や観光名所のお話なども聞けました。最後に参加証の「特製バッチ」をいただきました。与論島の魅力がギュッとつまったデザインは島の中学生の作品だそう。いいお土産になりました。

それぞれの想い、それぞれの手ごたえ

今回の参加者20名にはそれぞれストーリーと参加理由がありました。「東京2020大会」や「マラソン大会などスポーツボランティア」などの経験者だけでなく、「本格的なボランティア活動は初めて」という人も多数いました。

ボラサポの「ぼ活!」から参加したメンバーでは、「仕事とは違う非日常に、癒しを求めて」という人や、「30年前に第1回ヨロンマラソンに参加。お世話になった恩返しに」という人、「エネルギー会社勤務なので、与論島停電の危機が心配で」といった人も。Gakuvoから参加した学生は「先輩や教授に紹介されて」「社会勉強のために」といった人まで多様。思いの強さは、積極的な活動姿勢にも表れていました。

 

横山雅俊さん

「体を動かすのは好きですが、けっこうきついですね」。幼いころから野球やラグビー、テニスなどスポーツ好きの横山雅俊さんは額に汗を光らせながら、軽石でいっぱいになった袋を両手に抱え、海岸とトンパックの間を何度も往復していました。

東京に生まれ育ち、今は企業に勤務して、行政と協力し回収したリサイクル品のリユース先を見つける業務に就いています。並行してモデル活動も行っていて、将来はアメリカで俳優として活躍するという夢も持っています。

本格的なボランティア活動は今回が初めてで、昨年まで通っていた英語学校時代の友人に誘われて応募。リサイクル業に就いたのも、もともと地球のためになる活動に興味があり、「どうせやるなら、誰かのためになりたい」という想いからでした。

軽石についてはニュースで聞いてはいたものの、「ここまで大変な状況とは想定外。現状を見て、勉強になりました」と神妙な表情。また、「観光で来ただけでは見えないことも見えました。白いビーチが維持されているのは、毎日のゴミ拾いなど島民の皆さんの陰の努力のたまもの。大切にしなければ」という思いを強くしたそうです。

「目標は、『趣味はボランティア』と胸を張って言うこと。その第一歩を与論島で踏み出せました!」

 

長岐英恵さん

秋田県生まれの長岐英恵さんは現在、宮城県仙台市にある東北福祉大学3年生で、産業福祉マネジメントを学んでいます。

以前からさまざまなことに挑戦したい思いがあり、今回はゼミの先生から勧められて参加しました。軽石問題はTikTokで知っていたそうで、家族からも友だちからも「いい機会だね。がんばって」と背中を押されて参加しました。

これまでにも福祉施設訪問などの経験はありましたが、体を動かす本格的なボランティアは初参加。

高校時代は空手部で活躍したそうですが、軽石の詰まった袋は重く、「なかなかたいへんですね」と苦笑。それでも、「参加してよかったです。得るものがたくさんありました」

最近はアルバイトも忙しく、「無償のボランティア活動を、今の私はどう感じるだろうと思いながら参加しましたが、チームで協力して行う活動は楽しいし、島の人たちからの感謝の気持ちもすごく伝わってきて、うれしく思います。ボランティアって、Win・Winの活動なんだと強く感じています」

朝のゴミ拾い活動にも参加して島の人たちとも触れ合えたことで、「離島の印象も変わりました。将来、観光業界で働きたいと思っていますが、景観や環境を守ることに対して、あらためて考えるきっかけになったし、視野も広がりました」。

長岐さんの言葉は一歩を踏み出みだすことの大切さを教えてくれました。

 

安城久美子さん

安城久美子さんは神奈川県の海沿いにある辻堂に生まれ、今も藤沢市内に在住。「海が好き。きれいな海を守ることにかかわれたら」と参加しました。

「軽石の状況は想像以上で驚きました。掘っても掘ってもきりがなくて・・・・・・。それでも、少しずつ白砂が見えてきて、役に立てているかなとうれしく感じています」

本格的なボランティア活動は東京2020大会が初めてで、地元藤沢市のシティキャストとして友人と4人1組で応募。無観客開催となり、活動は選手バスの出迎えだけになりましたが、それでも選手たちの笑顔に触れ、やりがいを感じたそうです。

「今回は一人での参加で緊張しましたが、来てみたらみんな同じ目的で集まった人ばかり。学生時代のソフトボール部でのチームワークと楽しさを思い出しました」

中学生のお母さんという安城さん。「息子もヨット部員なので海が好き。部活の終わりにはゴミ拾いもしているようです。『与論に行く』と言ったら、最初は夫も息子も驚きましたが、理解して快く送り出してくれました」。美しくよみがえったビーチの写真はいいお土産になることでしょう。

早朝の海岸清掃活動にも参加。「毎日、自主的な活動で行ける人が行くという形で続いているのは、すごいです。私もまた地元での活動にも積極的に参加したいです」。新たな目標も見つかったようです。

ツアーにも参加!与論島の見どころを知って楽しみました

与論島では今、町の観光課や観光協会、島民らが一体となり、「エシカル・ツーリズム」を推進しています。これは旅先の文化を知り、旅先に配慮し、環境維持などで貢献するといった観光の新しい形態で、たとえば、ごみを出さない・持ち帰る、CO2削減などです。「観光客が漂着ごみを拾って、拾い箱に集める」もその一つです。

そのプログラムづくりの一環として、私たち一行も2日目以降、軽石除去と並行して、日中には電動キックボートで史跡めぐりツアー、夜には星空観賞会などのモニターツアーにも参加。環境に配慮しながら、与論島の見どころを堪能しました。

さて、活動中、何度も耳にした言葉が、「トートゥガナシ(尊々加那志)」。与論島の方言で、「ありがとう」を意味します。実は、軽石除去作業を目的に島外から来たグループは私たちが第一号とのことで、島をあげて歓迎していただきました。

私たちも環境問題や人とのつながりの大切さなど、さまざまな気づきをいただいた与論島での日々。こちらこそ、「トートゥガナシ!」の思いです。

与論島軽石除去ボランティア一日の活動の様子(タイムラプス動画)は↓から!
https://youtube.com/video/RJTHx_22VTw/edit

2/1(火)開催!「与論島軽石ボラ経験者が語る報告会」参加申し込みは↓から!
https://vokatsu.jp/event/1641950593236×606253949919690800

※この記事は2022年1月に「ぼ活!」に掲載されたものです。