グローバル・リーダーシップ・プログラム Global Leadership Program

ビジネスで問題を解決する

漠然と起業したいと考えていた。東日本大震災のボランティアをやる中で、地元のために事業を起こして活躍する人々や起業家を見たのがきっかけだ。彼らのようになりたいと思った。社会の問題に取り組む姿に憧れた。もちろん、このプログラムを通じてこの気持ちに変わりはない。社会問題を解決するような起業家になりたい。しかし、変わったことといえば、あえてビジネスで解決する理由がより鮮明になったのと、社会問題に関する問題の範囲だ。
私の取材したTelapakという団体は、活動の一つにインドネシアの違法伐採を解決するようなビジネスを行っている。違法伐採のいちばんの問題点は、環境破壊につながるような一度きりの森林伐採になることだ。言い換えると、持続的でない森林伐採になってしまうのである。これを持続的な森林開発にしようとTelapakはコミュニティーロギングという方法を取り入れた。詳細は省くが注目すべき点は、解決するために違法伐採しか選択肢がなかった住民に、コミュニティーロギングという違法伐採をするより有利な新しい選択肢を与えたことだ。既存の森林伐採では、住民が多くの利益を得るには違法伐採が一番採算が良かった。だから違法伐採に進む住民も多くなった。しかし、それより多くのお金がもらえるコミュニティーロギングを提示することで、住民が違法伐採の代わりに持続的な伐採を選ぶようになる。募金などの資金が不確かな活動とは違い、コミュニティーロギングはビジネスであり、資金が生まれそれが続いていく。つまり持続的な活動になる。ビジネスで社会問題を解決する強みはここにあると思う。そして忘れてはいけないのは、住民を対象に問題を解決しようとしたその視点の独特さだ。この独自性がないとビジネスもうまくいかない。それも合わせて、ビジネスで社会問題を解決するのは難しくも意義あることだと学んだ。
もう一つ、学んだこと。それは現実は自分の見方によって如何ようにも社会問題になりえることだ。今回訪れたジャカルタは、はっきり言ってだいぶ過ごしやすかった。私が無知のままインドネシアに乗り込んだのもいけないのだが、東南アジアの不自由な生活を少し期待していた自分としては肩透かしを食わされた。ジャカルタ市内は高層ビルが立ち並び、移動手段はUber。お土産を買いたいと言えばショッピングモールを案内される。屋台の食事を除けば東京と変わりがないのではないかと思うくらいであった。しかし、ふと気が付くとビルとビルの間にスラム街らしきものが見つかる。これは社会問題としてよく言われている貧富の差が表れている。交通渋滞だってひどい。これらは都市化の進む東南アジアでは当たり前のように思われているものかもしれないが、せっかく交通手段があるのに移動が素早くできない大きな問題である。私たちが当たり前に思っていることでも、そこには気づかないだけで問題が埋もれている。要はそれに気づくか気づかないか、意識して世の中を見ているか見ていないかの見方の違いである。これは経験の少ない自分にとって圧倒的に不足している。そういった見方で世の中を見回せればと解決されていない問題は無数にあると思う。ビジネスで解決できる問題は無数にある。
そもそも、社会問題を解決することと、ビジネスを行うことは相反するものなのか?今までまるでソーシャルビジネスを、この矛盾を克服する素晴らしいものだと考えていて、素晴らしいものには違いないと思うのだが、決して両社は違う向きのベクトルではないのではないかと思い始めた。社会問題は社会に大きな影響を及ぼし、その大きな影響はビジネスで市場を広くしていくことでカバーできる。持続的なビジネスは、長く問題を解決するのに最適である。話はこれほど簡単ではないだろうが、一理ある。私はそこに挑戦してみたい。より一層起業したいと考えるようになった。そのためにもまず、今の自分は今の社会にどれだけの問題を見つけることができるか?どれだけの視点を持つことができるか?問題は社会に溢れている。

(仁科慎也 慶應義塾大学経済学部3年)