
学生が取り組む社会課題や活動の意義を発信する力を身に着けて、活動への理解者・共感者を増やし、活動の活性化・発展につなげていって欲しい、という想いから実施しています。今回は、学生が参加したボランティアについて、経験したことや気付いたことを文章化し、応募してもらい、審査、表彰を行います。
結果発表
グランプリ

- 立正大学 地球環境学部 地理学科2年
- 梶 風希(かじ ふうき)さん
- 作品タイトル
- 『泥を見ずに、人を見る』
副賞

ビッグイシュー日本版
380号に全文掲載中
泥を見ずに、人を見る
立正大学 地球環境学部地理学科2年梶 風希(かじ ふうき)
私はこれまでに、二回の災害ボランティアに参加した(2020年2月18日現在)。二回とも台風19号で甚大な被害をうけた福島県いわき市での活動だった。
なぜ私がボランティアに参加したか。被災された方のために何か力になってあげたい、というのは表向きの理由で、本当の理由は、ボランティアしている俺って偉い、すごいですアピールをしたいといったなんとも不純な動機である。もちろん助けになりたいという気持ちはあるが大きなウェイトを占めるのは後者だった。最初はそんな動機で参加したが一回目の活動を終えるとボランティアに対する姿勢が変わった。
一回目の活動は屋内の作業で、主に床下の泥かき、家財道具の運び出し、清掃を行った。活動場所に着くと意気込み十分で、重い荷物を運び、清掃活動を一生懸命行った。しかし、仕事がなくなると、手持ち無沙汰になり、落ち着かなくなった私は家の持ち主の方に「なにか仕事ありませんか?」と仕事したいアピールをしていた。そんな私を見ていた先輩が、「あまり聞きこまない方がいい。被災された方のやり方がある。積極的に聞くのはかえってストレスになる」と教えてくれた。ハッとなった私は自分勝手な行動に後悔した。
この反省を次に活かしたいと思い、二回目のボランティアに参加した。そして、プログラムの中に、ボランティア活動をたくさんしてきた長源寺副住職の栗山さんの講演を聴く機会があった。栗山さんは「泥を見ず、人を見る」という言葉を教えてくれた。意味は、被害のあった場所を見るより、被害にあった人と会話をする方が大事ということだ。この言葉を前回の私の行動に照らしてみると「泥を見て、人を見ず」。まさに反対のことをしてしまった。また、人の心に寄り添う傾聴が大事ともおっしゃった。ボランティアは作業をたくさんこなすのではなく、会話をして人の心に寄り添うことが大事なのだと気付かされた。
次の日から、いろんな人と会話をしようと心がけた。そしたら、いろいろな発見をすることができた。仲間との会話では、一見初対面の人とでも実は繋がりがあって、他大学の人とは連絡先を交換し、これからも交流できるようになった。被災された方との会話では、詳細な被災状況や農業の知識、土地のことなど深い会話ができた。それにともなって自分の知識も増えた。このことから会話することの重要性を感じた。会話はボランティアだけでなく、自分の日常生活に必要でかつ大事である。会話をせずに生きていく人はおらず、また会話をすればいろんな情報をつかむことができ、たくさんの可能性が生まれる。
二回のボランティアしか参加していないが、どちらの活動も私に大切なことを教えてくれた。ボランティアは他人のためにしてあげるという考えが濃厚だが、実は自分に向き合う機会をくれ、自分のためになるものでもある。ボランティアは私を成長させてくれる。これからも自分自身を成長させていきたいと思う。
活動の様子
優秀賞

- 東京農工大学 農学部2年
- 河合 千尋(かわい ちひろ)さん
- 作品タイトル
- 『自分のためのボランティア』
自分のためのボランティア
東京農工大学 農学部2年河合 千尋(かわい ちひろ)
1.私のボランティア活動の動機
自分のためのボランティアを広めたい。大学入学以降何度もボランティア活動に参加してきて2年が経った今、私が感じていることだ。一般的にボランティアとは、よりよい社会のため、困っている人を助けるため、見返りを求めずに行う活動のことだろう。しかし私がボランティアに参加するときの動機は、自分の感じる「わくわく」が一番大きい。自然保護のボランティアに参加するときは「自分の好きな自然に触れることができるから」、障害者スポーツの大会運営ボランティアに参加したときは「自分の知らないスポーツの世界を見てみたかったから」、そんなふうに、自分がやってみたいと思うことに私はボランティアとして関わっている。実際にボランティアに参加すると、楽しいことはたくさんある。例えば私が参加している谷津干潟自然観察センターという場所でのボランティアでは、自然に触れる楽しみ、自然を人に伝える楽しみ、イベントの企画運営のやりがい、一緒に活動する仲間の存在など、私にとってプラスなことばかりだ。ボランティアを通して自分の好きなことに関わったり、自分の知らない世界を知って視野が広がることは心からわくわくするし、大切な友人や仲間ができることもある。自分にとって楽しいことができるのに加え、それが目的でないとしても結果人の役に立てるとしたら、それはとても素敵なことだと思う。
2.自分のためのボランティアを勧める理由
私みたいに自分のためにボランティアをする人が増えてほしい、と考えるのには理由がある。まず一つ目は、ボランティアと受入側が対等な関係でいられるからだ。ボランティアは受入側のためにわざわざ活動をするのではなく、自分のやりたいことができるから活動に参加する。受入側としては、必要な労働力が確保できる。どちらにとっても良いことでしかなくて、ボランティアが偉いという訳ではない。お金の移動もないから、お金出しているのだから働いてよ、みたいな上下関係もない。そんなwin-winな関係性をつくることができるのだ。そして2つ目は、ボランティア側のモチベーションが高い、ということだ。自己犠牲ではなく自分のやりたいことをするのだから、主体性もあるし積極的に動くことができる。楽しいからボランティアをする、という空気が一般的になれば、ボランティアに対するハードルも下がるし、もっと身近なものとして考えることができる。
3.目指す社会
もちろん、非常時の災害ボランティアのように、困っている人を助けるボランティアという存在も非常に大切であるということはわかっている。しかし、自分のためのボランティアをして、活動終了時に、ボランティア側も受入側も双方から自然と感謝の言葉が出てくる、そんなボランティアのあり方がもっと増えたら嬉しい。もっともっと個人が「わくわく」することで輝き、その輝きが合わさることでもっと素敵な、より良い社会になれるはずだと私は信じている。
審査員コメント
- 池田氏
- ボランティアへの入口を好きなこと・得意なことを起点にとらえることは共感する。
- 泉本氏
- すっきりとした構成。「自分のためにボランティア」という考え方を普及させ、奉仕活動を身近なものにしたいというメッセージはとても良い。
- 杉本氏
- ボランティアが対等な関係のもとに成り立つことを強調しており、まずは自分のためにボランティアをしてみる、その結果自然と相手のためにもなっている、という考え方は発信すべきものだと思う。
活動の様子
審査委員

- 池田 真隆いけだ・まさたか
- オルタナS編集長、1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。大学3年から「オルタナS」に特派員・インターンとして参画する。その後、副編集長に就任し現在に至る。環境省による社会起業家支援事業「TJラボ」の立ち上げに関わる。社会福祉HERO’S TOKYO2019最終審査委員(全国社会福祉経営者協議会主催)など

- 泉本 亮太いずもと・りょうた
- 24歳。大阪府出身。明治大学文学部卒業。2017年に北海道新聞社に記者職で入社。札幌本社スポーツ担当を経て、18年7月からオホーツク海に面した紋別市の支局に配属。5市町村で行政、警察、地域経済など、取材分野は多岐にわたる。
学生時代は、Gakuvoのインターン生として雑誌の製作や映像大会の企画に携わる。1~4年生までの毎年2回、東日本大震災の被害にあった福島県南相馬市で学習支援のボランティアに参加した。

- 杉本 昂熙すぎもと・たかき
- 21歳。東洋大学経営学部。学生団体おりがみ東京支部代表を務め、様々なボランティア企画責任者を経験。2019年自身で学生アイデアソン団体アイデア村を創設、代表を務める。大学ボランティア支援室のイベントサポートスタッフ。
募集文章
- テーマ
- 自身のボランティア体験と学んだこと、社会に発信したいこと
- 応募資格
- 大学生、大学院生、短期大学生、高等専門学校学生
- 応募規定
- 日本語、Wordで作成してください。手書きは不可です。
- 1,200字以内。タイトル、小見出しは文字数に含みません。
- 応募作品は自作、未発表のものに限ります。盗作が判明した場合は失格となります。
- 応募作品の著作権は主催者に帰属します。
- 個人の応募に限ります。1人1作品までの応募となります。
- 応募方法
- 専用のエントリーフォーム
審査基準
活動内容ではなく、文章のみで評価します。
応募者へのフィードバックも予定しています。
表彰
入賞
Gakuvoウェブサイトへの掲載
コンテストの流れ
- 1月中旬
- 募集開始
- 2月18日(火)
- 応募締め切り
- 3月中旬
- 結果発表
- 4月初旬
- ビッグイシュー日本版に全文掲載
審査員コメント